今週の土曜日10月29日に
『行政経営フォーラム』にて13:30から45分間程、
弊社佐々木が慶應義塾大学三田キャンパスにて講演致します。
※フォーラムは10:30〜17:50まで実施
内容は「地域ビジョンの策定−富士吉田市の事例紹介」です。
ご興味・ご関心をお持ち下さった方は
ぜひ当日会場に足をお運びください。
※事前申し込みが必要です
詳細は以下からご覧ください。
http://www.pm-forum.org/article.php/reikai_54th
(文責:山根元美)
について
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■小布施に残る、人々が敬意をもってみる蔵
このコーナーの初回となる今回は長野県小布施に残る蔵の話をご紹介致します。
小布施は、長野から北へ一時間程行った場所にある美しい街並の地で、年間120〜130万人の観光客が訪れています。私もとても好きなまちの一つで、街づくりの手本として、多くのことを学ばせて頂いた場所でもあります。そこには、今にも残る、古い土の蔵が存在しています。その蔵を前にした時、地元の方から蔵が建てられた経緯をお聞きすることがありました。そしてお話頂いた逸話は大変印象に残るものでした。
その蔵はある飢饉が起きた時、小布施の名主が建てたといいます。何故そのような時期に蔵を建てたのかというと、蔵を建てることでまちの人々に働きに来てもらい、その代価として蓄えていた食糧を提供し、飢饉で困窮している人々を救ったそうです。建てられた蔵は、今も敬意を持たれる形でこのまちに残っています。
蔵は名家の象徴とも映りますが、それを眺める人の思いは、二つに分かれるのではないかと思います。妬みを持つか、もしくは敬意を持つか。
もしこの蔵が、権威を見せたいという自己本位な都合で建てられたのであれば、妬まれ、尊敬などされずに見られるのかもしれません。そうでなく、まちの人々の求めに応じて造られた蔵であれば、敬意を持たれてみられるではないでしょうか。
この話は、相手が必要としている事に基点を置くか否かが大きな境目であると物語っているように思います。相手基点であれば歓迎され、結果的に人々の幸せを実現することに繋げることも出来るでしょうし、それに向けて動く人の存在も周りが認めてくれることになるのだと思います。
■“機を見る”ということの重要性
人々の求めに応じて造られた、敬意を受ける蔵。これは現代の様々なことに通じると思います。私たちは地域活性化のコンサルティングをするにあたり、当然ながら良い事業やサービスを作り、訪れるまちが魅力的であって欲しいという思いで、地域に関わらせて頂いています。しかし、関わり始める時、そのような「想い」を押しつけて地域地域に押し寄せても、大概は「頼んでいない」と拒絶されることにつながります。そのなかで無理やりことを進めようとしても、地元の方々が動くことにはつながらず、あまり良い結果に結びつくことがないようにも感じています。
そうではなく、地元の方々が自発的に何かを始めようとしている時、「頼まれる」から動くことが、非常に重要な点ではないかと考えています。
それでは、「頼まれる」状況になるにはどのようなことが必要なのか、ここでは三つほど思いつく点をあげてみたいと思います。
先ず一つ目に、ただ受身で待つのではなく、自ら扉を叩くことはやはり必要であるということ。ただしそこには扉の叩き方があり、決して強引であってはならないと感じています。例えば、相手から学べることが何かを真摯に考え、学ばせて頂けないかとお願いすることも一つだと思います。また直接相手に働きかけるよりも、相手が信頼している人に相談して、その人に客観的に自分を判断してもらうことも考えられます。
二つ目に、待たせて頂ける状態をつくること、すなわち、相手が自分と繋がりをもち、時間を使うことに嫌がらない形を整えること。例えば、相手の求めている情報を把握し、その情報を入手し、それを伝えるために会う時間を頂くなどが考えられます。
三つ目は、目を見開いて、機会を発掘すること。相手の方と接してさえいれば、機会は自ずと生まれて来るのではないかと思っています。ただしそれに気づかずに通り過ぎる場合も多いのではないでしょうか。相手がただ話しているだけで「頼む」と言ってくれることはまれだと思いますし、相手にとって懸念となりそうなことがあった場合、それを的確に指摘することで、それが頼むべき課題として顕在化すると感じています。
この原稿は、街オリ代表の佐々木が口述したものを、
「コトミ 〜 言葉で見える形に」を活用し、ライターが書面化致しました。
私たち街オリは、地域活性化に取り組む中、様々なまちに関わらせて頂いております。
地元の方々と共に活性化に取り組む地域もあれば、視察に行かせて頂く地域もあるのですが、それら訪れる地で、昔から今に語り継がれている逸話や、新しく生まれている多くの逸話に接します。その逸話の多くは、幅広い場面にも通じる、人に対する洞察や学び・気付きが在り、大変興味深いものです。また地域という単位だけではなく、街オリが接する機会を頂いている個々の企業においても同じく大切にしたい逸話をお聞きすることが多々あります。
今回、街オリは新しいコーナーを立ち上げます。地域や個々の企業において、お会いした方々からお伺いした、もしくは文献に記されていた逸話をご紹介しながら、私たちが心に留めておきたい学びや気づき、価値観を記し、そのなかで街オリらしさも併せて皆さまにお伝えできればと思っています。
尚、このコーナーでは、各記事の文末に常に以下の一文を記させて頂きます。
—– ラーニング・メモ —–
このコーナーは、街オリが心に留めておきたいことを書き記しておく立ち位置、
言い換えると自らのラーニング・メモという位置づけで書かせて頂いており、
その中から共有可能なものを、公開致しております。
2011年度、ある大企業からの依頼により、街オリは中国・台湾からの日本への観光客(訪日観光客)を対象としたインバウンド・マーケティング・プロジェクトに初めて取り組みました。今回はそこから得られた知見の一例と、そして街オリはインバウンドとどう向き合っていくべきか考えたことをお伝えします。
■調査をすると、事実が鮮明に見え、次の一手につながる
近年、アジアの国々の成長は著しく、日本ではその果実を取り込むことが課題・機会として重視されています。そうした中、今回のプロジェクトは、訪日観光客に焦点を当てながら新規事業の可能性を探るものでした。より具体的には、観光地へのヒアリング調査、中国人・台湾人観光客の方々へのアンケート調査、上海での展示会への出展などを実施し、そこからの考察をまとめました。
例えばアンケート調査を取りあげると、今回は中国・台湾からの訪日観光客653名に調査票を配布し、148名からの有効回答を得ました(有効回答率22.7%)。
このアンケート調査からは、いくつかの興味深い発見がありました。例えば好印象の宿泊施設の設問で上位を占めたのは、清潔感のある宿泊施設、サービスがしっかりしている宿泊施設でした。施設が古くても「人の手の行き届いている」宿泊施設の好感度が高いという結果です。
また、148名の回答者のうち86%が好印象と記載した施設からの情報を受け取りたいと回答し、そのうち70%の方が実際に電子メールのアドレスを記入しています。この高い正の回答率は、来て下さったお客様に連絡を取り続ければ、口コミでの広がりやリピーター獲得の可能性があることを示しています。現状、ほとんどの施設・地域がそう出来ていないことを考えると、機会損失が発生していると言えます。
他にも、訪日観光客と日本人との間で共通する点が多いとも感じました。たとえば、日本で何が印象に残ったかという設問に対して、148人中76人が雪の白川郷、黒部立山の雪景色、富士山の美しい景観などを挙げており、自然・歴史景観を愛でる感性は日本人と通じるものがあると言えます。
■インバウンドに基軸をあわせるのではなく、今ある基軸・強みをよりしっかりと認識することが大切
今回のプロジェクトに取り組んだことは、街オリの「インバウンド」に対する姿勢を考える良い機会になりました。そして「インバウンドの為に全てを合わせるのではなく、基軸はぶらさず、インバウンドのお客様にも対応できる体制を整える」ことを、支援する際の基本姿勢にしたいと思っています。
これは今回のプロジェクトの様々な調査を通してまとまった考えですが、その中でもある宿泊事業の経営者の話が強く記憶に残っています。その経営者は、まずそのホテルの成功要因としてお客様のニーズを踏まえた徹底的な合理化を進めていることを語った後、「私たちは、例えば中国のお客様にあわせて宴会場をつくるということはしない。それをすると、これまで進めてきた合理化と言う自分達の強みが損なわれる。インバウンドについては、それに経営を合わせるということはせず、自分達の経営スタイルを求めて下さるお客様を探しに行く」ことが大切ときっぱり言い切りました。
これは特に長期的視野で経営を考えた時に、とても重要なことだと思います。現在目の前にある機会に合わせることだけを考えていると、例えば安っぽい観光地を生むことにつながります。そうしたものは、時代が変わればすぐに廃れるでしょう。
インバウンドは向かい合うべき機会であるからこそ、これまでに培ってきたもの、人の心に根づくものをしっかりと捉えながら、どうインバウンドに結び付けていくかが持続・発展する地域・事業作りにとても大切です。
この原稿は、街オリ代表の佐々木が口述したものを、「コトミ 〜 言葉で見える形に」を活用し、ライターが書面化致しました。
夕焼けの雲がきれいだったので、オフィスのビルと一緒に写しました。
右下の白い建物が、街オリが入っているビルです。