実用性の中に美しさを見出す、街オリのデザイン哲学

カテゴリー: ラーニング・メモ

■実用性の中に美しさを見出す日本人の美意識
 
広島県の鞆の浦を訪れた際、ボランティアガイドの方に江戸時代にとても裕福だったという一族の家屋に案内してもらい、そこに使われている木について興味深い話を伺いました。その木は以前、船底に使用されていたもので、とても自然に建物の一部を成しており、持ち味もあって大変優雅に見えました。しかしなぜそこに船底の木を使ったのかというと、長年海に浸かっていた木は塩水を十分に含んでいるため白アリなどが付かず、非常に強いからという理由でした。見栄えのために使用したのではなく、あくまで実用性を考えて使用し、それが結果的に美しさになったとのこと。そしてそのボランティアガイドの方が添えてくださった一言がとても印象的でした。
 
「日本人の美意識は、生活の中の知恵や必要性から見出されるものであり、見栄えが先にきているのではない。実用性の中に美しさを見出していくことが日本人の感性の特色なのではないか。」
 
この話は、実に大切なことを言い表していると感じました。
 

 
■日本人の美意識に通じる街オリのデザインに対する考え方
 
街オリがデザインを手掛ける際に大切にしたいことも、実用性の中に美しさを見出すことです。例えばホームページは整頓されたものを、商品のパッケージは商品が棚に並び、消費者が向ける目線までを想像して、分かりやすいものを作る。如何にすればメッセージが伝わるかを考え抜くからこそ生まれる美しさがあります。こうした美しさを追求し、最終的に人の心に届くようしたいと思います。遊びからくるデザインもあっていいと思いますが、あくまで実用性・機能性を追求した上で加えたい。
 
消費者が求めることを把握するマーケティングをしっかりと行い、それに沿う機能美を追求した上で感性に響くものこそが、街オリが打ち出していくデザインではないかと思います。そしてそれは日本人の美意識に通ずるとも思います。
 
■ひとつひとつのアートを見つめながら、デザインで横につなぐ役割を
 
デザインとアートとを対比すると、ひとつの定義として、アートは自分の中に起点があり、デザインは相手の中に起点がある気がします。アートは追求することで自分自身をこじ開け、新しい可能性を生むことができる一面があると思います。一方、デザインは「世の中の求めに応えること」だと思います。街オリの本分である地域の光る原石をもっと世の中に出していくためには、このデザインの追求がとても大切です。
 
アートがひとつひとつの可能性を開くのに対して、デザインはそうしたひとつひとつを横に繋ぐものとも言えます。街オリはひとつひとつのアートをしっかりと見つめながら、それらを横につなぐ、織りなす役割を担っていきます。
 


この原稿は、街オリ代表の佐々木が口述したものを、「コトミ 〜 言葉で見える形に」を活用し、ライターが書面化致しました。