「全力で伝えたいことを、全力で伝えても伝わらない相手に、如何に伝えるか」。これは人材育成における根幹的なテーマの一つです。この記事では、街オリがこのテーマにどのような考えを持っているか、そして人材育成・研修事業の展開はどのような意義を持っているかをお伝えします。
■言葉で伝えるためには、厳しさと優しさとのバランスが大切
「全力で伝えたいことを、全力で伝えても伝わらない」ことは多々あります。例えば組織の上下関係について、私が社会人1年目の時には「上下関係は極力無い方が個々人の実力が生き、組織として力が出る」と思っていました。しかし実際に仕事をすると、世の中に新しい価値を生み出すためには、複数の人間が一つの方向に力を合わせることが重要なこと、そしてその為に上の者と下の者の役割分担、すなわち上下関係が必要なことが分かってきました。しかし、このことを上の人が下に人に真直ぐに語っても、受け入れられないことが多いでしょう。私自身、いろいろと痛い目にも合う中で実感したことであり、経験が違えば認識が異なることは当然です。
経験を経て成長することは勿論大切ですが、それと同時に言葉で伝えられるなら伝えたいこともあります。その際に大切な事の一つは、厳しさと優しさとのバランスだと考えています。優しさだけでは伝わらず、厳しく叱られてこそ気づくことが多々あります。しかし、厳しさが相手の受容範囲を超えると相手が精神的に壊れてしまうことがあり、やはり伝わりません。そのため「全力で伝えたいこと」を伝える時には、優しさと厳しさのバランスを取り、相手が受容できる範囲内の厳しさで伝えることが重要です。
厳しさの受容範囲には、個人差があります。受容範囲が広い、いわゆるタフな人は、成長ポテンシャルが大きく、組織にとっては採用したい人材です。しかし、どんなにタフな人でも限界はあり、その限界の見極めが肝要であると感じています。
■別の視点から人材育成を考える機会でもある、研修事業
街オリが自社内の人材育成を考えると同時に、人材育成・研修事業に取り組んでいることは、このテーマと向かい合うとても良い機会を得ていると感じています。
研修事業者にとって研修を受けている方々は、メッセージを伝えたい相手であると同時にお客さまです。そのため上からの目線でない謙虚な姿勢で、相手の心理状態を捉えようとします。同じ組織内であれば「なぜ言っていることが分からないのか」となりがちなところを、一呼吸置くよう自分を律することの求められる環境が、とても貴重です。
それと同時に、研修参加者に心地良いことだけを伝え、組織の中で求められる「あるべき姿」を見失うと、研修の意義はないとも考えています。研修事業はお客さまのいるサービス業ですが、お客さまのためになるためには、時に厳しい先生でなければならず、このバランス感覚が大切です。
自らの組織内だと上(全体)の目線から人材育成を考え易く、外の組織に提供する研修事業では全体の目線が欠け易い。これら双方の立場で人材育成を考えられる機会を活かし「全力で伝えたいことが、伝わる」よう、見識を培って行きたいと思います。
■人材の「あるべき姿」の根幹部分への洞察を常に深める
人材育成は企業経営においても地域活性化においても根幹にあるテーマです。そして活躍できる人材像はどちらも共通している部分が多いと感じています。当たり前のことを当たり前にやる力、深く考え抜く力、チームワークを大切に出来る力は、どちらにおいてもプロジェクトを成果に結びつけるために必要です。私が引き受けている大企業を対象とした研修が、中小事業者など地域における人材育成の参考になると感じることも多々あります。その逆もまた然り。
街オリはそうした人材の「あるべき姿」の根幹部分への洞察を常に深めながら、その上で、その組織その人に応じた人材育成に取組むことを目指しています。
追記、地域活性化は長期に渡る取組みが必要であること、その間ずっと外部の力が推進力になり続けることは困難であること、それ故に地元に推進力となれる人材がいることが大切であることを、地域活性化のプロジェクトに携わる経験を重ねるほど、痛感しています。
この原稿は、街オリ代表の佐々木が口述したものを、「コトミ 〜 言葉で見える形に」を活用し、ライターが書面化致しました。